[WELL-BEING TECHNOLOGY] 第6回トークセッション動画の見どころ特集

[WELL-BEING TECHNOLOGY] 第6回トークセッション動画の見どころ特集

本特集について

こんにちは、HAL編集部です。
この度私たちHALは、株式会社JTBコミュニケーションデザイン様と株式会社加工技術研究会様が主催する展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY -マテリアルと情報技術で拓く豊かな社会-」のメディアパートナーとして、ウェルビーイング特集を毎月更新します。今回は12月配信の動画について見どころをご紹介いたします。
今後も配信される動画の見どころや、展示会の見どころを発信してまいりますので、是非チェックしてください。

展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY」概要

近年、ウェルビーイング社会への関心の高まりとともに、身近な暮らしの中でひとに寄り添う新しい製品・サービスが注目を集めています。さわり心地のよい素材や快適な空間デザインとその評価技術、工場やオフィス・ 公共空間で活用が期待される協働ロボット、人間拡張技術、またXR技術で実現する新しい働き方など、ひとの健康や心地よさ、幸福度につながる視点での製品・サービス開発に取組む企業が増えています。当展示会ではこの分野に光をあて、「ウェルビーイング」と「産業」を結びつける場と して、2024 年に新規展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY(略称:ウェルテック)」として初開催します。

【開催日時】
2024年1月31日(水)~ 2月2日(金)10:00-17:00

【会場】
東京ビッグサイト 東ホール

第6回トークセッション動画「”はたらく”を支えるテクノロジー」

トーク登壇者

ナビゲーター
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
人間情報研究部 感覚共鳴グループ
上席特別研究員
渡邊 淳司 氏

【専⾨領域】
ソーシャルウェルビーイング論
個人それぞれのウェルビーイングとチーム全体のウェルビーイングをどのように捉え、充足していくのかを探求する領域。

ポジティブコンピューティング
人の心理的ウェルビーイングと人間の潜在力を高めるテクノロジーの設計・開発を探求する心理学とHCIの融合領域。

触覚情報学
触れる感覚の特性に基づき、人と人をつなげる触覚コミュニケーションの原理の探求やそのためのテクノロジーを研究する領域。

スポーツの身体的翻訳
スポーツの動きの本質を別の動きに変換(“翻訳”)し、手軽にスポーツを体験したり、目の見えない人と一緒にスポーツ観戦を楽しむ方法論。

渡邊淳司 研究サイトより引用

ゲスト

産業技術総合研究所
人間拡張研究センター
スマートワークIoH研究チーム
研究チーム長

大隈 隆史 氏

専門分野

  • サービス工学
  • XR
  • インターバース

産業技術総合研究所 人間拡張研究センター スマートワークIoH研究チーム
大隈隆史プロフィール

見どころ

第6回のテーマは「”はたらく”を支えるテクノロジー」。
今回は産業技術総合研究所 人間拡張研究センターの大隈氏にご登壇いただき、スマートワークIoH研究チームで行われている様々な研究を始め、テクノロジーによる支援が現代社会のはたらき方にどのような影響や効果をもたらすのかを実例を元にお話いただいております。リモートワークが常態化した現在、メリットもある一方で、コミュニケーションの変化による弊害も浮き彫りになっています。それらに対してテクノロジーを利用した支援は、企業の中でウェルビーイングなはたらき方を得られるひとつの手法であると言えるでしょう。
本記事では、その中から一部抜粋してご紹介いたします。(記事化に当たり一部表現を変えている箇所がございます)

「測る」という行為が持つコミュニケーションツールとしての役割

渡邊:まずは大隈さんが携わる研究の中から計測についてお話をお伺いしたいのですが、例えば体重を把握することなくダイエットを行うのは難しいように、自分のことを知るということは行動変容において非常に重要だと考えます。はたらく環境においては、大まかには、業務の管理側と実施側の2つに分かれるかもしれません。その両方において、可視化や計測が影響を与えるのか、経験談も含めて教えていただけますか?

大隈:そのようなお話でよくご紹介しているのが、特定量分析の中でQC(Quality Control)支援にあたるレストランの事例です。和食レストランのがんこフードサービスさんですが、関西で有名な和食レストランチェーンであり関東でも数店舗展開されています。この会社では、食事の提供やお料理の説明等の接客を行うスタッフの方々が、実際に普段からこういうところでよかったよね、悪かったよねというお話をしながら、QC活動として現場改善を進めてらっしゃいます。製造業のように現場外での活動ですが、指標が無い場合は売り上げなどの数字でしか結果を測ることができません。外部要因も影響しやすく、例えば天候やイベント開催による周囲の環境といった中で、実際にスタッフ側の取り組みによる効果が把握しにくい状況です。
そこで我々は行動計測を通じて、お客さんがいる時間帯、お客さんがいるテーブルに接客スタッフがどのくらい滞在しているかを可視化し、バックヤードと接客エリアにおけるスタッフの滞在時間を把握しました。その結果、夕食の時間帯でも四割ほどしか接客エリアにスタッフが出られていなかったということが分かりました。では残りの六割は裏方業務に費やされているのであれば、もっと接客エリアに出られるようにどのように工夫するか改善策を模索しました。我々は技術コンサルタントでもレストランの経営コンサルタントでもないので、あくまでこのようなきっかけをお見せしただけなのですが、彼らは話し合いの中でお客様が少ない夕方の時間帯にも接客エリアにいるスタッフがいることが多いと気づきました。それから夕方に宴会の準備を行い、夜の宴会時間帯に接客エリアにスタッフが出られるようにすることで一人当たりの追加注文数が増加しました。製造業でいう工程の組み替えのようなことです。その結果、夕方に接客エリアにいる割合は減少しましたが、店舗売り上げの上昇という大枠での指標ではなく、一人当たりの追加注文数の増加といった細かい粒度で改善の成果が得られたと言えます。このような分析を通じて、スタッフは改善活動に対するやりがいを感じ、さらなる効果を追求する意欲が高まりました。

また、QC活動は基本的にはたらく個々の方々の自発的な活動ですが、改善案を考える際には店長に相談します。しかしこうした相談が「問題があるから改善してほしい」と伝えると、不平不満のように受け取られることがあります。ところが、データに向かって話し合うことで、お互いを攻撃するのではなく同じ方向を向くことができ、コミュニケーションが円滑に進みます。問題解決のための具体的なアクションが明確になり、店長が知らなかった現場の実態が浮かび上がることもあります。このデータを活用することで、管理側と実際にはたらく側とのコミュニケーションツールとして非常に効果があり、何度か経験してきた中でその効果を実感しています。

バーチャルの活用によるウェルビーイングな「はたらき方」とは

渡邊:今のお話を伺って、「測る」という行為が外部から物差しを当てるというよりは、それを通じて現場の人同士が振り返りをし、自分たちの行動の成果をより高い解像度で分析するきっかけとなること。そして、データがあることで上司と部下が「私とあなた」ではなく「わたしたち」としての協力につながるということで、非常に興味深い話だと感じました。
もう一つ、今度は計側ではなく介入側、VRを活用したシミュレーションも含め「はたらく」が今後どのように変わっていくのか、その点についてもご意見があればお聞きしたいです。

大隈:実は「バーチャルリアリティ」という言葉を使うと、単に現実と乖離した空間の中で、現実と離れた体験をするというイメージにどうしてもなりがちです。しかし、我々は実際に現実環境として存在する三次元の空間、具体的には我々の研究センターである産総研柏センターの建物内の環境をそのままバーチャルの世界に持ち込み、実際の現実で起きていることをバーチャルの中で同時に再現し、バーチャルにいる人もリアルな環境で実際に起きていることを遠隔から体験できるようにするというコンセプトを追求しています。純粋なVRよりも遠隔地からでも体験できるARのようなもので、これまでの言葉では上手く表現できなかったため、最近では新しい言葉として「インターバース」という表現を用いています。「メタバース」がネットワークで接続されたバーチャル環境を指し、多くの人がインターネットを通じて一つのバーチャル空間にログインしてコミュニケーションを取ることに対して、「インターバース」はバーチャルな環境の中で人々が単に集まるのではなく、実際のリアルな環境とバーチャルが融合した空間に、現地と遠隔地の人々が入ってその融合した空間でコミュニケーションを取ることです。我々はこのようなことを目指しています。

このような意味では、単にみんながバーチャルな世界に集まって、今のビデオカンファレンスのように資料を共有しながら話すだけでなく、実際のリアルな出来事を感じながら、周りの人が話しかけて来たり、誰かの横を通り過ぎる際に偶然出会って立ち話をしたりなど、これまでのテレワーク環境では難しかったコミュニケーションをどんどん起こしていく。これによって今テレワークで問題視されている組織への帰属感の薄れや、チームワークの弱まりなどに対する不安を、現地に行かずともコミュニケーションを通じて取り除くことができます。まさにこれもはたらくという活動のウェルビーイングだと思います。はたらき方を選択できる自由な世界をつくるためには、リアルとバーチャルの融合によってはたらく環境を提供し、チームや組織での作業やコミュニケーションに一役買うことができるのではないかと、この方向性に向けて今後の研究を進めていく予定です。

後半では引き続きバーチャルのお話とアバターが生み出すコミュニケーションの活性化についてなど、働き方とコミュニケーションを助けるトークが続きますので、ぜひ動画でチェックしてみてください。

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