[WELL-BEING TECHNOLOGY] 第2回トークセッション動画の見どころ特集

[WELL-BEING TECHNOLOGY] 第2回トークセッション動画の見どころ特集

本特集について

こんにちは、HAL編集部です。
この度私たちHALは、株式会社JTBコミュニケーションデザイン様と株式会社加工技術研究会様が主催する展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY -マテリアルと情報技術で拓く豊かな社会-」のメディアパートナーとして、ウェルビーイング特集を毎月更新します。今回は8月配信の動画について見どころをご紹介いたします。
今後も配信される動画の見どころや、展示会の見どころを発信してまいりますので、是非チェックしてください。

展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY」概要

近年、ウェルビーイング社会への関心の高まりとともに、身近な暮らしの中でひとに寄り添う新しい製品・サービスが注目を集めています。さわり心地のよい素材や快適な空間デザインとその評価技術、工場やオフィス・ 公共空間で活用が期待される協働ロボット、人間拡張技術、またXR技術で実現する新しい働き方など、ひとの健康や心地よさ、幸福度につながる視点での製品・サービス開発に取組む企業が増えています。当展示会ではこの分野に光をあて、「ウェルビーイング」と「産業」を結びつける場と して、2024 年に新規展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY(略称:ウェルテック)」として初開催します。

【開催日時】
2024年1月31日(水)~ 2月2日(金)10:00-17:00

【会場】
東京ビッグサイト 東ホール

第2回トークセッション動画「触覚技術による心地よいものづくりとコミュニケーション」

トーク登壇者

ナビゲーター
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
人間情報研究部 感覚共鳴グループ
上席特別研究員
渡邊 淳司 氏

【専⾨領域】
ソーシャルウェルビーイング論
個人それぞれのウェルビーイングとチーム全体のウェルビーイングをどのように捉え、充足していくのかを探求する領域。

ポジティブコンピューティング
人の心理的ウェルビーイングと人間の潜在力を高めるテクノロジーの設計・開発を探求する心理学とHCIの融合領域。

触覚情報学
触れる感覚の特性に基づき、人と人をつなげる触覚コミュニケーションの原理の探求やそのためのテクノロジーを研究する領域。

スポーツの身体的翻訳
スポーツの動きの本質を別の動きに変換(“翻訳”)し、手軽にスポーツを体験したり、目の見えない人と一緒にスポーツ観戦を楽しむ方法論。

渡邊淳司 研究サイトより引用

ゲスト

名古屋工業大学 大学院工学研究科 教授/
稲盛科学研究機構 フェロー


田中 由浩 氏

所属学科・専攻

電気・機械工学教育類 機械工学分野/創造工学教育類
電気・機械工学専攻 機械工学分野

研究分野

  • ハプティクス
  • ロボティクス・メカトロニクス
  • ヒューマンインタフェース

国立大学法人 名古屋工業大学 研究者データベースシステムより引用

見どころ

第2回のテーマは「触覚技術による心地よいものづくりとコミュニケーション」。
今回は渡邊氏の触覚分野はウェルビーイングに実は関連しているのではないかという考えを起点に、触覚研究において名高い田中教授が実際に関わったプロダクト研究を例にしながら、触感とウェルビーイングのデザインについて様々な角度から捉えていきます。
一見繋がりが見えない「ウェルビーイングと触覚」がどのような視点で繋がっていくのか、その関係性が垣間見える非常に興味深い内容となっております。触覚研究に携わるお二人ならではのトークセッションを一部ご紹介いたします。(記事化に当たり一部表現を変えている箇所がございます)

ウェルビーイングと触覚の関わり方と触覚が持つウェルビーイングの中での役割

渡邊:田中さんの自己紹介の中にあった触覚の個人差という部分がすごく気になりました。感覚の個人差もあるかと思いますが、心地よいマテリアルという言葉にもあるように、心地よさの個人差は性別とか年代によって違いがあるのかなと思いましたが、その辺りのご研究も紹介いただけますでしょうか。

田中:そうですね。ちょっと前にあったダイハツさんとの共同研究の話なのですが、最近の自動車はとてもスイッチが増えました。支援運転が始まり、ステアリングとかにたくさんのスイッチがあるのですが、実はあまりスイッチの触り心地はおそらくそんなに検討が進んでいません。よくF-S特性という力とストロークの関係でスイッチの節度感などが評価されるのですが、まだあまりバリエーションもないのでダイハツさんと一緒にどういった心地よさがあるんだろうか、それはモデル化できるんだろうかという研究をしたことがありました。まさしく趣向性の部分はクラスター解析をやってみると、カッチリ派のものが好きな人と、しっとり派の好きな人がいて明確にクラスターで分かれました。しっとり派は女性が多いのかなと推察していたのですが、いざやってみるとそうではなくて、割とカッチリ派としっとり派は男女関係なく存在していました。加えてどのような感覚を主で捉えているかという知覚の構造の解析も行いました。ここに関してはあまり個人差はなくて割とみんな似た次元で捉えていて、そうするとそこの支配的な感覚はある程度F-S特性から抽出したもので説明し、最終的な心地よさの方はどっち派か分けてモデル化するということをしました。

渡邊:心地よさは年齢とか男女でカテゴリを分けがちですが、そうではなく感覚の価値判断のようなところから、例えばカッチリ派としっとり派という風に分けていくこともできるでしょうか。

田中:おっしゃるように、ものづくりでは年齢や身長といった所謂人間工学的な部分では、今回企業の方でアンケート取ってくださったのでそれなりのダイバーシティはあるのですが、偏りは見えませんでした。むしろおっしゃるようにどのような車の運転の価値を持っているかや、あとは正しくウェルビーイングかもしれないのですが自分にとって何がモチベーションアップに繋がっているかとか、心地よさに繋がっているか、そこの価値も違うと思います。そういった点での違いが出ているのかな、と考察はしています。ただ検証はしていないので、本当は性格判断とか運転の特性と関係性が出てくると面白いと思います。

渡邊:今聞いていてすごく興味深いと思ったのが、感覚とその人の価値の関係性、例えば車を運転するにしても、手や足で感じる感覚とその人が持っている運転感や車からどんな価値を得ているかといったものが密接に関係しているということがすごく面白い。ウェルビーイングはあまり素材と関係ないかと思いきや、運転における自己効力感、自分が車を動かしている実感を感じたいと思ったら、結局マテリアルまで考える必要が出てくるのでしょうか。

田中:はい。今の話は仮説なのですが、基本的に私たちの行動は全て環境認識やそういったものから成り立っているので、感覚入力があるからどのような行動を起こそうというのを決めていると思います。だからその関係性はとても重要です。その自分の中で経験値や趣向性そのものがどうやって醸成されたかはわからないのですが、ある種自分の中で個々人の異なるモデルがあると思います。そうすると、やはり好きな入力と好きな出力の関係性をしっかり結び付けてあげて、デザインしていくというところでは素材そのものが最初に触れる初めのスタートなのですごく大事ではないかなと思っています。

キーワードは「心地よさ」、ものづくりを通して見えてくる触覚と価値観の繋がり

渡邊:例えば心地よい運転感覚といっても、どうしてそれがこの人にとって心地よいのかまで探って考えると、さっきのスムーズに運転できる話や、もしくは人との心地よい会話の場であったり、それらの心地よさをもう一段階ブレイクダウンすることで素材との関わりが出てきたり。他にも例えるなら、人との関わりが大事な車の価値であれば、座り心地だったり、隣の人との距離が価値として捉えられますし、今まで単純に座って気持ちいいとか運転する満足感だったところを、その人のウェルビーイングの要因から見直すこともできるのではないかと思いました。

田中:それすごくいい話だと思いますし、企業さんが私のところに色々相談に来てくださるのですが、やっぱりまだ心地いいものを作りたいですというお話が多いです。私もよく心地よさをブレイクダウンしましょうという話をするのですが、心地よさに対する価値や方向性が割と企業さんによっても違うんです。安心や安全を追求したいというところもあれば、もうちょっとワクワクするとかそれぞれ企業さんが持っている理念にも関係をしていて。本当はそれぞれが求める心地よさのようなものをしっかりブレイクダウンして、そこを目標に設定できると、もっともっと心地よさの多様性が広がって、おそらく個々人に応じたものに繋がってくるし、ブランディングに繋がってくる。だから心地よさをブレイクダウンするというのは、私はあまりウェルビーイングといった考え方よりは純粋にそういう心地よさをもう少し分解して方向性を決めましょうというイメージでしたけど、確かにそれは結局ウェルビーイングだなと聞いていて感じました。

渡邊:そうなんですよ。先程たまたま自己効力感という耳慣れない言葉を使いましたが、ワクワク感のような実感のある言葉だと、「じゃあワクワク感を作るには、手元はぎゅっとした感じがよい、もしくは肌触りがさらさらでスムーズに動く感覚が必要」という形で心の言葉が感覚の言葉に落ち、今度は物理まで落ちていきます。そのようなかたちでデザインができていくと面白いです。

田中:そうです。それをやっぱりちゃんと狙っていくということが、これからものづくりで大事になってくると思いますし、実際運動や行動にも必ず変化が出てきて、心地いいもの、先程話したすごくサラサラしたものだったら割と力加減も普通にできるのですが、粗くなってくると力加減が小さくなったりとか、うまく行動設計のようなものも入れてあげるとすごく密接になってくると思います。

後半では更に触覚研究から見る技能伝承の話など、ぐっと研究内容にも近づいたお話が展開していきますので、続きは動画でチェックしてみてください。

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