[WELL-BEING TECHNOLOGY] 第5回トークセッション動画の見どころ特集

[WELL-BEING TECHNOLOGY] 第5回トークセッション動画の見どころ特集

本特集について

こんにちは、HAL編集部です。
この度私たちHALは、株式会社JTBコミュニケーションデザイン様と株式会社加工技術研究会様が主催する展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY -マテリアルと情報技術で拓く豊かな社会-」のメディアパートナーとして、ウェルビーイング特集を毎月更新します。今回は11月配信の動画について見どころをご紹介いたします。
今後も配信される動画の見どころや、展示会の見どころを発信してまいりますので、是非チェックしてください。

展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY」概要

近年、ウェルビーイング社会への関心の高まりとともに、身近な暮らしの中でひとに寄り添う新しい製品・サービスが注目を集めています。さわり心地のよい素材や快適な空間デザインとその評価技術、工場やオフィス・ 公共空間で活用が期待される協働ロボット、人間拡張技術、またXR技術で実現する新しい働き方など、ひとの健康や心地よさ、幸福度につながる視点での製品・サービス開発に取組む企業が増えています。当展示会ではこの分野に光をあて、「ウェルビーイング」と「産業」を結びつける場と して、2024 年に新規展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY(略称:ウェルテック)」として初開催します。

【開催日時】
2024年1月31日(水)~ 2月2日(金)10:00-17:00

【会場】
東京ビッグサイト 東ホール

第5回トークセッション動画「ウェルビーイングを紐解く脳科学」

トーク登壇者

ナビゲーター
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
人間情報研究部 感覚共鳴グループ
上席特別研究員
渡邊 淳司 氏

【専⾨領域】
ソーシャルウェルビーイング論
個人それぞれのウェルビーイングとチーム全体のウェルビーイングをどのように捉え、充足していくのかを探求する領域。

ポジティブコンピューティング
人の心理的ウェルビーイングと人間の潜在力を高めるテクノロジーの設計・開発を探求する心理学とHCIの融合領域。

触覚情報学
触れる感覚の特性に基づき、人と人をつなげる触覚コミュニケーションの原理の探求やそのためのテクノロジーを研究する領域。

スポーツの身体的翻訳
スポーツの動きの本質を別の動きに変換(“翻訳”)し、手軽にスポーツを体験したり、目の見えない人と一緒にスポーツ観戦を楽しむ方法論。

渡邊淳司 研究サイトより引用

ゲスト

応用脳科学コンソーシアム
兼 エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所
ニューロイノベーションユニット マネージャー

磯村 昇太 氏

専門分野

  • 脳科学
  • 認知行動科学
  • Well-being
  • 生理データ計測

一般社団法人応用脳科学コンソーシアム
NTTデータ経営研究所 ニューロイノベーションユニット

見どころ

第5回のテーマは「ウェルビーイングを紐解く脳科学」。
今回は脳科学に携わる磯村氏をゲストにお迎えし、アカデミアと産業間に横たわる課題を皮切りに、個人により異なるウェルビーイングに対して、脳情報がどのような影響をもたらすのか、具体例を交えたトークとなっております。アカデミックな側面を踏まえビジネスへ転換するための要素として、脳科学はどう生かされるのか。ビジネスとして広げ、社会実装へ近づくヒントを得られるのではないでしょうか。
本記事では、その中から一部抜粋してご紹介いたします。(記事化に当たり一部表現を変えている箇所がございます)

アカデミアと産業の間にある溝

渡邊:まずは脳科学とウェルビーイングについて、普段様々な研究者や企業の方とお話しされていると思いますが、その中で課題と感じられていることがあればお聞かせください。

磯村:他の領域でも同じ考えが適用できると思いますが、研究者の基本的な考え方や目標は、背後にある理論や背景を明らかにすることです。一方で企業は、それらの機序を解明するより、ユーザーの幸福感を向上させたり、商品の売上を増やしたりすることが目的となります。双方の目的意識や時間軸に関する違いが最も大きな課題としてあると考えています。

渡邊:原理の解明や理論化を目指す研究所や大学での活動と、問題の実践的解決や商品販売を目的とする企業活動とにはギャップがあるように感じます。このギャップを埋めるためには、どのようなアプローチが必要でしょうか。

磯村:大きく二つのアプローチが考えられます。通常、研究では実験環境下で計測されたデータを使用することになりますが、一方、産業応用では実際の環境下での効果が重要となり、統制されていないさまざまな要因が絡むため、実験環境下とは結果が異なる可能性があります。そのため、1つ目のアプローチとして、Well-living for Well-being研究会では実環境下でデータを取得し、その中でも得られる結果を明らかにしたり、個人単位でデータを継続的に収集したりすることで、その個人の中で平均的な値に対し介入するとどのように効果をもたらすかを評価できるフレームワークを構築しようと取り組んでいます。これが実現すると、アカデミックな内容と実環境下、市場における効果の評価に繋げることができます。
もう一つのアプローチは、モデル化です。脳モデル開発ユニットの活動でご紹介したように、統制された実験環境で得られたデータを最新のAIなどを駆使してモデル化し、例えばある物理的な特徴から人がどう感じるかを予測します。これを応用することで、企業の製品の効果や感性価値を事前に予測できるようになると考えています。

渡邊:なるほど。生活環境で人を継続的に測定するという一つ目のお話は、ウェルビーイングの個人差を考えると、とても重要なことだと思います。一般化された結果が、必ずしも個人一人ひとりに当てはまるわけではなく、特にウェルビーイングは、それぞれの人の生活環境や社会関係の中からその人に合った方法を見つける必要があります。

ウェルビーイングを評価軸とした商品・サービスの可能性

渡邊:ちなみに、個人差はどれくらいあるものなのでしょうか?

磯村:そうですね。同じ介入でも効果が出ない場合と、アカデミックで言われた効果が実環境でもある程度確認できる場合があります。我々も大量の個人特性の質問紙を収集し、年齢や性別だけでなく就業環境や家族構成などの属性情報も考慮しています。まだまだ結論は得られていない部分ではありますが、こうしたアプローチを通じて何が個人差に影響しているのかを明らかにしようとしています。
また、個人内の変動も我々はとても重要視しています。普通に生活しているときと、気分がいいとき、疲れているとき、女性であれば生理周期など、そのような個人内の変動を考慮してデータを評価することが、特にウェルビーイングに関わる研究では非常に重要だと考えています。

渡邊:個人差はサービスや製品の開発において、とても大きな課題ではないかと想像します。その際に、提供する側ですべての可能性を用意するのは大変かもしれませんが、それぞれの人が自分で自分をケアできる環境を整えるといった、一歩引いたアプローチがよいでしょうか。

磯村:そうですね。おっしゃる通り、今までのマスプロダクトから一人一人のウェルビーイングという評価軸にしていくと、同じ商品やサービスを提供しても感じる効果には差が生じるため、動的に変えられるようなものが必要になると考えています。今までのマスプロダクトでは既存の大企業やアメリカの資金力のある企業に対抗するのは難しいかもしれませんが、一人一人にフォーカスしてより細かく個人に最適化を図ることで、日本の企業が持つ技術を最大限に活かせる可能性があります。
市場全体としてもより大きく、色々なバリエーションを持って視野を広げていくことができるのではないでしょうか。一つの製品だけではなかなかウェルビーイングを実現できないと思うので、この展示会と同様に複数の企業や製品が組み合わさって、総体として人や組織のウェルビーイングを向上させることをパッケージとしてできるとよりよいと考えています。

渡邊:非常に重要なポイントをご指摘されているなと感じました。個人それぞれが自ら個別にできるような余白あるサービスやテクノロジーが必要であると同時に、全体としては個人の生活を複数の側面からトータルに見ていくことが重要だということですね。また、磯村さんは、嗅覚などの感覚にも焦点を当てた取り組みもなされているとのことですが、これらがウェルビーイングとどのように関連し、今後どのような進展が見込まれるか教えていただけますか。

磯村:香りについては実験的に扱うことが非常に難しいので、他の感覚に比べて基礎および応用研究がまだ進んでいない状態だと感じます。とは言え最近では香りをデジタル化したり、香りを提示する装置や新しいデバイスが開発されたりしており、このようなテクノロジーを利用して、様々な分野での知見を横に繋げていく取り組みが必要です。我々としてはその取り組みを行う場をつくっていきたいと考えています。
また、香りや触覚だけでなくVRやメタバースなどの実環境に近い統制可能な環境がもっと進んでいくと、香りの提示が容易になりますし、これによって香りや触覚がウェルビーイングにどのように影響するかなど、新たな展開が期待されます。我々はこのような進展を積極的に推進していきたいと思っています。

後半では個々人の五感がウェルビーイングにどう影響を与えるのか、またそれに対して脳情報がどのように繋がるのかを具体例を交えながらセッションが続きますので、ぜひ動画でチェックしてみてください。

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