本特集について
こんにちは、HAL編集部です。
この度私たちHALは、株式会社JTBコミュニケーションデザイン様と株式会社加工技術研究会様が主催する展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY -マテリアルと情報技術で拓く豊かな社会-」のメディアパートナーとして、ウェルビーイング特集を毎月更新します。最終回である今回は1月配信の動画について見どころをご紹介いたします。
いよいよ会期が迫ってまいりましたが、引き続き展示会の直前特集などを予定しておりますので是非チェックしてください。
展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY」概要
近年、ウェルビーイング社会への関心の高まりとともに、身近な暮らしの中でひとに寄り添う新しい製品・サービスが注目を集めています。さわり心地のよい素材や快適な空間デザインとその評価技術、工場やオフィス・ 公共空間で活用が期待される協働ロボット、人間拡張技術、またXR技術で実現する新しい働き方など、ひとの健康や心地よさ、幸福度につながる視点での製品・サービス開発に取組む企業が増えています。当展示会ではこの分野に光をあて、「ウェルビーイング」と「産業」を結びつける場と して、2024 年に新規展示会「WELL-BEING TECHNOLOGY(略称:ウェルテック)」として初開催します。
【開催日時】
2024年1月31日(水)~ 2月2日(金)10:00-17:00
【会場】
東京ビッグサイト 東ホール
第7回トークセッション動画「人とロボットの共存を叶えるロボットフレンドリー」
トーク登壇者
ナビゲーター
NTTコミュニケーション科学基礎研究所
人間情報研究部 感覚共鳴グループ
上席特別研究員
渡邊 淳司 氏
【専⾨領域】
ソーシャルウェルビーイング論
個人それぞれのウェルビーイングとチーム全体のウェルビーイングをどのように捉え、充足していくのかを探求する領域。
ポジティブコンピューティング
人の心理的ウェルビーイングと人間の潜在力を高めるテクノロジーの設計・開発を探求する心理学とHCIの融合領域。
触覚情報学
触れる感覚の特性に基づき、人と人をつなげる触覚コミュニケーションの原理の探求やそのためのテクノロジーを研究する領域。
スポーツの身体的翻訳
スポーツの動きの本質を別の動きに変換(“翻訳”)し、手軽にスポーツを体験したり、目の見えない人と一緒にスポーツ観戦を楽しむ方法論。
渡邊淳司 研究サイトより引用
ゲスト
ロボットフレンドリー施設推進機構
理事
村松 洋佑 氏
専門分野
- ロボット
- スマートビル
- 施設管理
見どころ
第7回のテーマは「人とロボットの共存を叶えるロボットフレンドリー」。
最終回ではロボットフレンドリー施設推進機構から村松理事をお招きし、人とロボットの共存についてのお話で本シリーズを締め括っていただきます。
みなさんは「ロボットフレンドリー」という言葉をご存知でしょうか?ロボットの進化による環境や人の生活の変化には著しいものがあります。環境や人とロボットとの関係性も徐々に変わっていく中で、どのような形がウェルビーイングな共存につながるのでしょうか。人とテクノロジーをつなげるものの一つであるロボットが、ウェルビーイングな社会を目指す中でどのように浸透していくのか、この先の自分とロボットとの関わり方を考えてみるきっかけになるような対談です。
本記事では、その中から一部抜粋してご紹介いたします。(記事化に当たり一部表現を変えている箇所がございます)
環境の一部としてのロボットとパートナーとしてのロボット
渡邊:展示会WELL-BEING TECHNOLOGYでは、人々がウェルビーイングに生きられる環境をつくるというテーマがあります。その環境づくりにおいて、ロボットは、エレベーターと連携するという意味では環境の一部とも言えると思いますし、一方で、共感することのできるコミュニケーションのパートナーだということもできます。村松さんの取り組みのなかでロボットとは、環境の一部なのか、それともパートナーなのか、どちらの要素が強いとお考えでしょうか。
村松:確かに難しい問題ですね。ロボットにとっての環境はエレベーターやフラッパーゲート、ビルの設備などといった要素が該当しますが、同時に人にとっての環境において、ロボットはその一部と見なされることがあるでしょう。環境の定義によりますが、無機質で反応がないものが環境であるとすれば、エレベーターやフラッパーゲートなどがこれに該当するでしょう。一方で配膳ロボットがレストランなどで見られるようになると、彼らが環境そのものと言えるかは疑問です。特に子供が触れ合いながらサービスを受ける場合は環境と定義するのは複雑で、むしろ一緒に生活しているような存在に該当するかもしれません。
渡邊:なるほど、ロボットはパートナーでもあり、人が豊かな生活を送る上でさまざまな意味での機能性も持っているということですね。ちなみに、「ロボットフレンドリー」という言葉はどのくらい一般的に使用されているのでしょうか。
村松:「ロボットフレンドリー」はもともと経済産業省が作った言葉で、私たちの組織は2022年にできましたが、取り組みとしては2019年ごろから行われており、少しずつこの単語の認知が広がっていると感じています。
渡邊:ウェルビーイングに向けた環境づくりは、ヒューマンフレンドリーということができるかもしれないと思いますが、ロボットフレンドリーというのは、それとも両立し得るイメージでよいでしょうか。
村松:まさにその通りだと思っています。どちらかだけにフレンドリーということは恐らくなく、今後労働力が減少する中で、人だけ、ロボットだけでなんとかしようというのは難しい状況で、お互いが共存できるような中間地点を見つけることが重要だと考えています。
国内・海外におけるロボットへの要求の違い、そして環境・人・ロボットの協働
渡邊:ロボットは特定の機能を代替するとともに、パートナーとしても存在する、その両方が求められているように感じました。日本では比較的受け入れられやすい素地があるかと思う反面、海外ではどのような状況なのでしょうか?
村松:まず日本では機能性よりも親和性が重視されていると感じています。もちろん機能性も大切で、最終的には人が見えない場所では機能性だけを求める人もいるでしょう。一方で配膳ロボットのような人前に出るロボットは、多少愛嬌がないと受け入れづらいと言いますか、機能だけではない世界を追求しないと広がっていくことは難しいと感じます。これは日本の国民性やアニメなどの文化的にロボットに対して親和性を感じているようなメンタリティが影響していると考えられます。一方、海外では異なっているように思います。具体的には、ロボットの仕様はフレンドリーさや親和性を求める傾向は薄く、現状では機能性を追求することが主流です。ただし彼らのメンタリティから見ると、そもそもロボットに対する親和性がそこまでないようにも見受けられます。もちろん国によって異なり、アジア圏は比較的フレンドリーである一方、ヨーロッパではロボットへの馴染みが少ないようです。このような中でロボットは、どちらかというと機能性を重視するデザイン傾向が多いというのが海外の印象です。
渡邊:なるほど。日本では漫画などの影響もあるかもしれませんが、ロボットには機能性と親和性の両方が必要だと感じました。これらは、あらゆるウェルビーイングテクノロジーにおいて大事だと思います。ビジネスをするにしても、機能性がなければその価値や対価を考えるのが難しく、一方でそれが人としての充足にどうつながるのかも考える必要があります。また、今、村松さんが行われている取り組みはある種の標準化に近いものなのでしょうか?
村松:おっしゃる通り、まさに規格など、標準的な仕様を作っています。
渡邊:ロボット業界に標準のようなものがあまりなかったということでしょうか。
村松:ロボットやエレベーター、自動ドアそのものについてはあるのですが、間をつなぐインターフェースという意味で言うとこれまで全くありませんでした。
渡邊:重要なポイントですね。人間の生活を考えると、エレベーターやドア、鍵などがあって、これらはシームレスにつながっています。それらをつなぐということですね。
村松:おっしゃる通りです。ある意味、人間は非常に優れた存在なのでつながることが比較的簡単です。例えば、エレベーターと連携しようと思ったら自分でボタンを押して階を指定し、開くボタンを押して出れば良いだけですが、ロボットはまだ技術的にも課題が残っており、システム的な連携が必要です。しかしそのハードルは高く、これまであまり進展していませんでした。安全性を重視して検討されている部分が多く、そのためになかなか検討が進んでいませんでした。しかし、近年では労働力人口の減少や将来の技術革新を考慮しながら、少しずつ進展していると思います。
渡邊:ロボットが活動領域を広げるためには異なる分野との協働が必要と考えます。これによって業界同士が結び付けられるような事例が存在するのでしょうか?
村松:はい、存在しています。私たちの取り組みにあるエレベーターやフラッパーゲートは主にオフィスや大規模ビル向けのものでしたが、ご家庭内では例えば「ルンバブル」のような単語もあります。これは業界を横断した取り組みであると思います。家庭用ロボットの仕様に合わせた家具やデザインや行動様式が流行しており、結果的に業界横断的な連携がなされていると考えます。例えば人が会社にいる間に自動的に掃除を行ったり、ペットが特定の部屋に入らないようにしたりするなど、家具・人間・ロボットの三者がうまい塩梅でバランスを取りながら少しずつ連携していくことが実際に起きていると思います。
渡邊:そのような連携は、結局のところ人々の生活領域においても必要なことであり、それによって人々が何かを考え始めるきっかけになると非常に面白いと感じます。
村松:本当におっしゃる通りだと思いますね。今私たちでも、警備・清掃・搬送などが元々の主流のロボットのタイプでしたが、案内やコミュニケーションなども一部ありながら、機能面だけを追求して夜中にロボットが単独で清掃や警備をするだけで本当に十分なのかといった議論が進んでいます。ただ一方で、親和性を求めてどのようにして協業するかという視点も捨ておけないと考えています。
後半では「ロボットフレンドリー」が広まることによって高まるロボットの社会的需要の話や、ロボットとの共存に関わるウェルビーイングトークが続きますので、ぜひ動画でチェックしてみてください。